2019年12月09日

温もりの光景

 先達ての帰宅ラッシュの電車の中でのことでした。
 様子の良い60代前半と覚しき方が、立っている私の一つ斜め前のシートに座って、文庫本を読んでいました。その男性が、熱心に読んでいた本から、なにげなく自分の前に立っている方に視線を向けた時、そこにお腹の大きな女性が立っているのに気付いた風でした。その男性は直ぐには、その妊婦さんに席を譲ることはしなかったのですが、程なく到着した駅で電車か止まった時、直ぐその女性に席を譲りました。混雑し動いている電車の中で席を替わることの危険性を避けた席譲りの行為は、スマートで気の行き届いたものでした。席を譲られた女性は、素直に感謝の言葉を口にして腰を下ろしました。立ったその男性は、何事もなかったように、また本を読み始めました。
 快速急行の電車は、間の駅を幾つも通過しながら走行していました。そして10分ほど過ぎたあたりに着いた駅で、男性が降りようとシートに背を向けた時でした。席を譲って貰った女性が男性のスーツの裾を少し引きました。男性が、振り向くと女性は深々と頭を下げていました。男性も会釈を返して電車を降りました。
 その次の駅で降りた私は、そんな温もりの光景を胸に帰路に着きました。
posted by nikki at 09:59| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする