2020年02月24日

雪の朝

 冬になると思い出すことがあります。それは、豪雪の津軽に住んでいた時のことです。
 キーンと冷えた冬の朝、サクサクという雪かきをするスコップの音で目が覚めました。昨夜来の雪も上がって、久し振りに白々と明ける朝でした。寝惚け眼を擦りながら、はたと気付きました。あの雪をかくスコップは父に間違いないということを。布団をはね除けて、服を着込み雪かきの身支度を調えて外に出ると、思っていたとおり、家族が寝ている間に膝までも積もっていた雪を父が額に汗しながら、丹念にかいていたのです。
「父さん、今日ぐらい雪かかなくて良いのに。俺がやるから」
 そう声を掛けた私に、父は笑顔で言ったのです。
「明日から、朝の雪かき頼むぞ」  その日、父は胃がんの摘出手術をするために入院することになっていたのです。今日、雪かきをしたからと言っても、また明日になれば、津軽には丈高く雪が降り積もるのです。しかし、そんな降り積もる雪から一日でも家族を守ろうとして、病を背負いながらも、雪かきをしてから入院しようと考えたのでしょう。それが家長としての役割でもあるという様に。
 父が死んでもうすぐ三十年にもなるけれど、あの雪の朝のことを思い出すと、今更のように父の有り難さに目頭が熱くなるのです。
posted by nikki at 10:06| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする